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妊娠期の不快症状

妊娠・出産は一大ライフイベント

「女性にとって一大ライフイベントである妊娠・出産は、妊娠という事実を受け止めながら体の変化を受け入れ、心には喜びと不安が入り交じっている時期です。」と辻内敬子先生は言われます。

この妊娠期に起こる何らかの不快症状を上げると
つわり・不眠・冷え・耳鳴り・腰・腰痛・背部痛・下痢・便秘・痔・むくみ・足の静脈瘤・足のけいれん・ こむら返り・頻尿・めまい・立ちくらみ(妊娠中期以降)・肩こり・皮膚のかゆみ・手足のしびれ・手首の痛み・動悸・髪の毛のトラブル・お腹の張り・腹痛・貧血・不安などがあります。

妊娠中は、薬を使えないことが多いので不快感が解消されないこともあります。

そのような時、少しでも快適に過ごして出産を迎えられるように鍼灸治療をしてみませんか?

出産力をつけるには、腎を守りましょう!


東洋医学では、妊娠を「女子の腎気が充実していて、発育し成熟して任脈・衝脈に気血が流通すれば、月経は来潮して懐妊する能力を得る。」と考えます。腎は精を蔵する臓器で、生長、発育、および生殖器に重要な作用があります。生命の根本と捉えています。

腎気には、先天の気(親から譲り受けたもの)と後天の気があり、その2つが元気という「精」を作り、お腹の赤ちゃんの成長や発達に関係していきます。妊婦さんはお腹の赤ちゃんに生命エネルギーを注ぎ込んでいます。腎の精が消耗する時は、腰痛・背部痛・不眠・冷え・疲労・不安・恐れなどの不快症状が生じます。

妊娠後は、臓腑の気血を任脈・衝脈に注いでお腹の赤ちゃんを養うため、血が不足しやすく、気はバランスを崩しやすく、イライラしやすい状況になると考えます。妊娠すると腎は働きづめです。冷やさない・疲れないなどに注意して、腎を守ることが必要です。
腎を守るためには、妊婦さんがよく寝て、おいしく食べて、消化・吸収された栄養をカラダに供給することで、腎の精(元気)が補われ、妊婦さんからお腹の赤ちゃんへと元気を与え続けることができるのです。お腹の赤ちゃんが元気に育つうえで妊婦さんの腎の元気が大切で、これが消耗するとさまざまな不快症状が生じてきます。

妊娠・出産に関連が深い臓腑は、腎、肝、脾、胃です。これらの経脈上のツボに鍼と灸を施術することによって、消耗している臓腑に気血を補い、現れている症状の改善を図り体調を整えます。そして、腎の精(元気)が補われ、妊婦さんからお腹の赤ちゃんへと元気を与え続けることが出来るのです。

先天の気について

『出産準備教室』辻内敬子著より

「冷え」は腎の元気を弱めます

その大事な腎の元気を攻撃し、弱めてしまう作用をもっているのが「冷え」です。冷えから身を守り、身体に入れないことが大切です。
身体が冷えているとホルモンの働きも筋肉の動きも低下してしまいます。また、冷えがある時は分娩前に足浴をしてカラダを温めると気血の流れがスムーズになり、お産の進行によい影響がでてきます。

お腹の赤ちゃんは児頭で産道を押しながら、温めて広げ延ばし軟産道を降りてきます。まるで熱を加えて形作る粘土細工のように時間をかけながら温め、柔らかくし広げ延ばしていきます。粘土と同じように産道も暖かい方が早くび、子宮筋も疲労せず、妊婦さんも疲労しないで済むと考えます。

古くから「冷え」を取り安産のためのツボとして「三陰交」が有名です。
1952年石野信安医師が学会で、「三陰交」のお灸が妊婦さんとお腹の赤ちゃんに優れた効果を発揮することを発表してから、妊娠中の三陰交へのお灸が見直されるようになりました。

三陰交の効果


三陰交の知熱灸(じんわりと熱さを感じたら取るお灸)

辻内敬子先生が、2002年に『安全な分娩を目的とした三陰交施灸の効果』(母性衛生、43)について学会発表をしています。その一文を紹介します。

「東洋医学では、安産のために『三陰交』のお灸が古くから知られている。

『三陰交』は、生殖器、泌尿器、消化器、水分代謝、全身のエネルギー、血の巡りに関係する足の3つの陰の経絡が交わった点にあるつぼで、『女性の養生穴』としても知られている。

『三陰交』のお灸は、高齢出産や初産の妊婦さんには特に勧められる。効果として、お産の分娩時間が短い、出血量が少ないなどがあげられる。妊婦さんの健康ばかりでなく、生まれてくる赤ちゃんの胃腸が丈夫になり、リズム感が発達し、体が敏捷に動くなどといわれている。

お灸による刺激は、血液中に赤血球や白血球、免疫の役割を担う物質の生成を盛んにし、それが妊婦さんの健康と赤ちゃんの健康に貢献する。」

その他、つわり・蕁麻疹のような皮膚のかゆみには「裏内庭」、逆子には、「至陰・三陰交」にお灸をします。

心と体を調えましょう

辻内敬子先生は 「妊娠・出産は、安定した心と充実した体が重要です。妊婦さんには、妊娠に伴う自分の体の変化や、分娩時に必要な体力や気力について具体的にイメージしてもらうことが大切です。陣痛を迎え、赤ちゃんを押しだし、生み出す体力・気力を持つ体を作ることです。」 と言われます。

経絡治療は、ソフトに鍼と灸でツボにアプローチをして、身体の気血の流れを良くし、五臓のバランスを整えることによって、 部分でなく、カラダ全体を治療することにより、五臓がやどしている精気(生命力)と神気(精神活動)が全身にみなぎり、本来その人の持っている力(免疫力・自然治癒力)を高め、日々のストレスに柔軟に対応できるように心身を調えます。

特に、妊娠・出産の時の経絡治療は、腎の元気が補われるように、腎経の他に肝経、脾経、胃経の経脈も施術します。

(引用及び参考資料:『出産準備教室』辻内敬子著
『漢方用語大辞典』 形井秀一他
「女性と鍼灸―産婦人科領域の鍼灸の安全―」全日本鍼灸学会誌51,2001. )


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