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食欲不振・胃腸のトラブル・疲労感

検査結果は異常ないけれど・・・

「病院へ行き、『胃カメラ、CT、血液検査では異常はないです。ストレスでしょう。』と言われました。でも症状がとれないんです。鍼灸でこの辛さが治るでしょうか?」と訴える方々が来院されています。

共通している症状は、
□食事がとれない
□少ししか食べられない
□食べると気持ち悪くなる
□食べると食べたものが込み上げてくる
□胃がもたれる
□胃が痛くなる
□時々下痢をする
□よく眠れない
□夢を多くみる
□疲れやすく元気がでない
などです。

病院で《検査結果は異常ない》と言われても、辛い上記のような症状が続いている方に鍼灸治療は適用します。

また、「何回鍼灸をしたら、良くなるでしょうか?」と尋ねられます。けれども、お一人お一人の病いの程度・期間・体質・年齢などが異なりますから、治療回数も人によって異なります。ですから、○○回治療したら治りますとは言えないのです。

それでは、東洋医学(中国伝統医学)の身体のとらえ方を少し説明いたしましょう。

東洋医学の身体のとらえ方

図1

足腸明胃経の矢状面断画図。循行には内行(破線)と外行(実線)がある。内行の状況が明らかになったことは、十二経脈説の最大の進化で、内行の状況が分かるようになって蔵府の治療も可能になった

表1 内行と外行
循行 内行 胸腔・腹腔・骨盤腔 蔵府など
外行 体壁・四肢・頭頸部 (浅層)皮膚・皮下組織
(浅層)筋肉・靭帯・関節

図1、表1 『温灸読本』 宮川浩也著

東洋医学(中国伝統医学)には、「気」「血」が人の身体を流れていると考えます。臓器や消化管、骨格といったものは入れ物や管にすぎないので、その中を流れるものこそが、人の身体にとって本質的なものと考えます。

本質的なものとは、「気」「血」が身体を流れているということです。この「気」「血」は、五臓(肝・心・脾・肺・腎)六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)のひとつひとつと関係しています。その気血が流れるルートを「経脈」と呼ばれています。その経脈は、身体の内部(内行)と外部(外行)を巡っています。

経脈に気血が正常に流れていれば、全身は健康的に維持されますが、その流れが悪くなると病気が生じます。経脈の流れが悪くなることを「滞(とどこお)り」と言います。この気と血が多かったり少なかったり、あるいは流れが滞ると不調がおきてきます。特に「気」が重要とされます。

自然の気として風・湿気・熱気・寒気などをイメージできると思います。人の気を「①生命の原動力となる勢い。活力の源。気勢・精気・元気。②心の動き・状態・働きを包括的に表す語。気を静める。気がめいる。気が散る。気が短い。気を入れる。気に病む。・・・」と『広辞苑』は説明しています。

日常、「気」という言葉が多く使われています。気は見えないと思いがちですが、器に水を入れてお湯を沸かすと沸騰して湯気が立ってきます。寒いときに呼吸している息が白くなります。寒稽古のとき身体から湯気が立っています。その湯気が気です。そう考えると「気」をイメージしやすいと思います。

「気」が重要なのは、「生命の原動力となる勢い」つまりエネルギーだからです。その気に導かれて、血が流れ、全身の臓腑・器官・組織に栄養を届けられるからです。ですから気の量が少なくなると、全身に栄養が行きわたらなくなります。

不調に悩まされないためには?

不調に悩んでいる方は、手術後の身体、女性の更年期の前後、精神的なストレスなどによって気血が消耗されているため、気力・元気・精気が出てこない状態になっています。これを「虚」と言います。
「虚」には、いくつかありますが「気虚」と「血虚」を見てみましょう。

「気虚」・・・気の不足、滞っている状態
原因 重病後、手術後も長く患っている(久病)、精神的なストレスなど。
症状 食事がとれない
少ししか食べられない
食べると気持ち悪くなる
食べると食べたものが込み上げてくる
胃がもたれる
胃が痛くなる
時々下痢をする
疲れやすく元気がでない
など。
「血虚」・・・血の不足、滞っている状態
原因 産後の失血、手術の失血過多、思慮過度、更年期障害など
症状 よく眠れない
夢を多くみる
体・手足が冷える
不安になることが多い
生理痛がある
生理不順になりがち
肌が荒れ、ツヤがなくなった
など。

当院では、鍼と灸で気血(エネルギー)の流れを良くします。
「望診・聞診・問診・触診(切診)」
により「気虚」なのか「血虚」なのかを判断し、治療の手段と方法を決めます。

経絡治療は、部分だけでなく、カラダ全体を治療します。体表面にあるツボは、経脈(ルート)により五臓六腑(内臓)に通じています。

五臓のはたらきが身体の表面に現れてくる反応点を「ツボ」と呼びます。そのツボを、鍼で微細な刺激を与え、さらにお灸で温めることによって気血(エネルギー)の流れ良くし、気血が多かったり少なかったり、あるいは流れの滞りを調えます。

そのことによって、食欲不振・胃腸のトラブル・疲れやすさ・冷え・よく眠れない・精神的不安などの症状が改善され、身体の隅々まで栄養が行きわたるようになり、精気が漲(みなぎ)り、活力にあふれ、気力が充ちるようになります。

(参考資料:『脈から見える世界』『砭石』『温灸読本』『気流れる身体』)


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